ソフトウェア開発の世界では、”ノーコード”という新たな概念が急速に注目を集めています。
ノーコード開発は誰でも簡単にWebサービスやアプリを作れる手法で、いまや米国で広く利用されています。世界的大企業のGoogle、Microsoft、Amazonも参入しており、今後ますますの期待を予感させます。
この記事では、初心者でもわかるように基本的な定義、メリットデメリット、具体的な使用例、今人気のノーコード開発ツールについて掘り下げていきます。
ノーコードとは何か?
ノーコードの定義
ノーコード(No-Code)とは、「コードを書かずにソフトウェアを開発する方法」を指します。
その名前の通り、ノーコード開発は開発者が特別なコードの知識を持たなくても、視覚的な操作だけでソフトウェアを作成できるように設計されています。
具体的には、開発者はテンプレートやドラッグ&ドロップの機能を活用し、全機能を備えたソフトウェアを構築します。
ノーコードの哲学は、技術的な背景を持たない人々でも、自分たちのアイデアを形にする能力を強化することにあります。
これにより、ソフトウェア開発は、コードを理解し、それを適切に操作できる一部の専門家だけのものから、より広範なユーザーに開放されます。
ノーコードのメリット
以下、ノーコード開発の3つのメリットです。
● プログラミングの知識がなくてもソフトウェアを開発できる
ノーコードツールは、技術的な背景を持たない人々でも、ソフトウェア開発を視覚化し、直感的に理解できるように設計されています。
これにより、プログラミングの代わりに、画面上のウィジェットをドラッグ&ドロップしたり、設定を変更するだけで、ソフトウェアを作成できます。
● 開発工数を削減し素早く開発ができる
ノーコード開発ツールは、あらかじめ多くの機能が用意されています。
既に作られたテンプレートやモジュールを利用すると、時間と手間を大幅に削減し、複雑な機能を持つアプリケーションも迅速に開発できます。
どのくらい開発工数を削減できるかは、開発するソフトウェアの規模や複雑さによって異なりますが、一般的には、通常の開発に比べて、開発工数を50%~70%削減できます。
● デジタルリテラシーの促進
ノーコードツールを使用することで、非開発者でもデジタルツールに慣れ親しめ、デジタルリテラシーを向上させられます。
これにより、個々のユーザーだけでなく、組織全体としても技術的な知識やスキルが広がり、様々な解決策を生み出す能力が向上する可能性があります。
ノーコードのデメリット
以下、ノーコード開発の3つのデメリットです。
● 日本語対応されていない
多くのノーコードツールは、英語圏の企業によって開発・提供されています。
そのため、ツール自体のインターフェースや公式のドキュメンテーション、サポートが英語であることが一般的です。
これは、英語に不慣れな利用者にとっては情報へのアクセスや問題解決が難しくなる可能性があります。
● 大規模開発には向いていない
ノーコードツールは、主に小規模から中規模のプロジェクトを対象としています。
これらのツールはプロトタイピングやMVPの作成、または小さなビジネスのためのアプリケーション開発に非常に適しています。
しかし、大規模なプロジェクトや複雑なロジックを必要とするアプリケーションに対しては、カスタムコードの書き込みと同じレベルの柔軟性を提供することは難しいです。
※MVPとは、ユーザーが価値を感じられる必要最小限の機能を持つプロダクトを指します。
● カスタマイズの制限
ノーコードツールは、コードを書くことなくアプリケーションを作成するための便利な手段ですが、その一方で一部のカスタマイズは制限される場合があります。すなわち、プラットフォームが提供する機能やコンポーネントの範囲内でしかアプリケーションを作成できないケースがあります。もし特別な機能や細かなカスタマイズを求めるなら、一部の要件は満たせないかもしれません。
ノーコードの具体的な使用例
具体的な使用例として、企業と個人に分けて解説します。
● 企業観点
企業内のさまざまな部署で使用される業務アプリの開発が挙げられます。
例えば、人事部門では下記ノーコードツールを使って作成ができます。
新卒採用のための学生管理システム
学生の基本情報、面接日程、採用状況などを一元管理するデータベースを作成し、それぞれの学生の情報を迅速に確認や更新ができます。
その他にも、社内の一部門だけでなく、組織全体のワークフローを効率化することも可能です。
申請・承認ワークフローのデジタル化
例えば、申請と承認のワークフローにて使用すると、従業員が休暇申請を行う日常的な申請プロセスをデジタル化できます。
申請は自動的に適切なマネージャーに申請され、そのマネージャーは特定の時間や場所を気にせず、承認または却下を即座に行えます。
紙ベースの申請プロセスに比べて時間を節約し、誤解や混乱も減らすことができます。
● 個人観点
個々のプライベートなアプリ開発が挙げられます。
自己表現の一環としてブログやウェブサイトの作成
趣味や専門知識を共有するためのブログ、または自己のスキルや経歴を紹介するポートフォリオサイトを手軽に作成できます。
さらに、日々の暮らしでもノーコードツールは役立ちます。
ライフマネジメント
自分の学習進度を追跡するアプリ、健康状態を記録するアプリ、あるいは家計簿を管理するアプリなど、個々のライフスタイルに合わせた管理ツールを自分自身で作成し、使用できます。
人気のノーコード開発ツール3選
ノーコード開発ツールはビジネスアプリ、Webサイト、顧客管理の領域をはじめとした多種多様なサービスがあります。
今回は、その中でもビジネスアプリの人気なツールをご紹介します。
● Salesforce
SalesforceはCRM(顧客関係管理)ツールの世界的リーダーで、企業が顧客情報を一元管理し、ビジネスプロセスを自動化できるサービスです。
顧客の360度ビューを提供することで、よりパーソナライズしたアプローチが可能になります。
ただし、その多機能性ゆえに学習曲線は急であり、高度なカスタマイズには専門的な知識が必要です。
特に、顧客関係を深く理解し効率的にビジネスを展開したい企業におすすめのツールです。
● Bubble
Bubbleはコーディングの知識がなくてもウェブアプリケーションを作成できるノーコード開発プラットフォームです。
フルスタックアプリケーションをビジュアルに設計することが可能で、開発時間とコストを大幅に削減します。
ただし、一部の複雑な機能には制限があるため、パフォーマンスやセキュリティ面での問題が生じる可能性もあります。
プロトタイピングやMVP(最小限の製品)の作成を迅速に行いたいスタートアップや、技術的な背景がない創業者に最適です。
※Bubbleについてはこちらの記事を参照してください。
● kintone
kintoneはビジネスアプリケーションをノーコードで作成できるクラウドサービスです。
ユーザーフレンドリーなUIと直感的な操作性が特徴で、データベース管理やプロジェクト管理、業務フローの自動化が可能です。
しかし、組織全体での利用を前提とした設計なので、個人や小規模チームでの利用にはオーバースペックである可能性があります。
組織の業務プロセスを効率化したい中規模~大規模な企業に最適で、特に業務アプリケーションを迅速に構築したい場合に有用です。
まとめ
ノーコード開発は、特定のプログラミングスキルを必要とせず、誰でもソフトウェア開発に取り組める新たな開発手法です。
これにより、複雑なコード作成に時間を割くことがなくなるため、開発工数が削減できます。
その結果、より迅速にプロジェクトを進行させられます。
しかしながら、大規模なプロジェクトや詳細なカスタマイズを必要とする場合、ノーコード開発の適用は難しいケースもあります。
ノーコードツールのメリットデメリットをよく理解した上で、適切なツールを選択することで、ノーコード開発は高い価値を提供するでしょう。