【Salesforce Spring ’26①】Agentforce完全攻略|管理者必見のAI新機能を徹底解説

【Salesforce Spring ’26①】Agentforce完全攻略|管理者必見のAI新機能を徹底解説

Salesforce Spring ’26リリースでは、AIが自律的に業務を遂行する「Agentic Enterprise(エージェント駆動型企業)」への転換が本格化します。本記事では、Agentforce Platformの全容、営業・サービス・マーケティング部門での具体的活用法、Enhanced SummariesやReal-Time Translationsといった新機能の詳細、対応エディション・ライセンス情報、そして導入のベストプラクティスまでを網羅的に解説します。

はじめに:Agentic Enterpriseへの転換点

Salesforce Spring ’26リリースは、企業がAIを単なるツールとして利用する段階から、AIが自律的に業務を遂行する「Agentic Enterprise」へと進化するための決定的な転換点となります。本リリースの核心は、人間の専門知識とAIエージェントをシームレスに組み合わせ、組織内のあらゆるチームが高度な自動化と顧客体験向上のための強力なツールを活用できるようにすることです。

AIはもはや人間の問いかけに答えるだけの受動的なチャットボットではありません。企業の戦略を深く理解し、Data Cloudに蓄積されたリアルタイムデータを武器として自ら判断を下し行動する「能動的な同僚」としての地位を確立しました。

Agentforce Platformの進化:自律型AIの共通基盤

Agentforce Platformは予測AIと生成AIを融合させ、ワークフォースの効率を極限まで高めるための共通基盤です。Spring ’26では標準トピックとアクションが劇的に拡充されました。

業界別標準アクションの拡充

特定の業界や複雑な業務ニーズに即応するため、プロンプト作成不要で実務に投入できる標準アクションが多数追加されています。

Agentforce for Net Zeroでは、エージェントが複数のステークホルダーと対話し、環境・社会・ガバナンス(ESG)情報を自動収集します。車両資産の排出源データ取得アクションによりvehicleAssetEmssnSrcDataオブジェクトから必要な値を抽出したり、未完了タスクを持つステークホルダーへのフォローアップメール送信が自律的に実行されます。Data Cloud Oneのアーキテクチャを通じて、複数の組織を跨いだ統合管理も可能です。

Financial Services Cloud向けには、顧客との会議準備や事後フォローアップを自律的に行うトピックが追加されました。会議準備では財務プロファイルのリアルタイム要約、財務目標やポートフォリオパフォーマンスの可視化が可能です。事後フォローアップでは会議メモからライフイベントをAIが自動抽出し、構造化データとしてレコードを作成します。

Consumer Goods Cloudでは、店舗コンプライアンス分析や訪問記録に基づくインサイト提供アクションが追加されました。総収益計算や売上トップ/ワースト製品の特定、在庫切れ分析に基づく営業トーク提案が実行可能です。

Nonprofit Cloud向けには、時間、場所、資格要件に基づいて最適なボランティアを未充足のシフトへ自動的にマッチングさせる機能(Match Volunteers to Shifts)が登場しました。

Lightning Types MCPツールによる開発革新

開発者向けにはLightning Types Model Context Protocol(MCP)ツールが導入されました。大規模言語モデル(LLM)を活用してカスタムのLightning Web Component(LWC)レスポンスを生成するためのメタデータファイル(schema.json、editor.json、renderer.json)を動的に作成する仕組みです。Agentforce Vibes ExtensionなどのIDEを通じて、自然言語による指示からリッチなUIレスポンスを持つエージェント用コンポーネントを迅速に構築できます。

Agentforce Sales:営業パイプライン構築の完全自律化

今回のリリースでSales CloudはAgentforce Salesへとブランド名称が刷新され、AIが営業活動の全工程をリードする体制が整いました。

リード生成と適格性確認の自動化

新しいAIエージェントは、インバウンドのWebやメッセージングからのリード獲得、および会議のスケジュール設定を自律的にこなします。Agentforce Qualificationにより、リードが自社の「理想的な顧客プロファイル(ICP)」にどれだけ適合するかをAIが会話内容から判断し、自動的にレーティング(Hotなど)を更新します。リードが「Hot」と判断された場合、レコード所有者にはAIによる要約とともに即座にレビュータスクが自動割り当てされます。

セラーは現在、リードの選別などのプロスペクティング活動に週平均6〜8時間を費やしていると言われています。この機能によりその時間を直接的な商談活動に充てることが可能になります。

Agent Handoff機能により、インバウンドリード獲得エージェントが即座の会議設定に至らなかった場合、自動的にリード育成エージェントへ引き継がれ、長期的なアプローチが継続されます。

リード育成の圧倒的スケーラビリティ

自動制限管理により、メール送信上限やLLMリクエスト制限をAIが自ら管理し、大量のプロスペクトを同時並行で育成できるようになりました。リストビューから最大200件の候補を一括でエージェントに割り当て可能です。

管理上限の具体的数値として、Gmailアカウント使用時は最大25,200件、Outlookアカウント使用時は最大137,200件ものプロスペクトを一人のエージェントが管理できます。キューは顧客からの返信メールを最優先し、次に導入メール、最後にナッジ(催促)の順に高い優先度を自動割り当てし、効率を最大化します。

Agentforce Service:サービス部門のAI活用と業務効率化

Service CloudもAgentforce Serviceへと進化し、顧客対応の「質」と「効率」を同時に引き上げます。

Enhanced Summariesによる要約機能の革新

従来のケース要約は一種類のみでしたが、新しいEnhanced Summariesでは利用者の役割に応じたカスタマイズが可能です。サービスレップ向けには顧客からの問い合わせ内容、問題の切り分け状況、進捗中の対応アクションなどが自動でまとめられます。マネージャー向けの要約ではチームの対応件数やSLA達成状況など管理に必要な指標が提示されます。役割に応じて必要な情報だけを抽出できるため、情報過多による混乱を防ぎ迅速な意思決定を支援します。

Enhanced Summariesの設定は管理画面から行い、誰がどの要約タイプを閲覧するかを細かく制御できます。Salesforce独自の生成AIが会話内容やケースフィードを分析して文脈を理解し、ただの抜粋ではなく文脈を踏まえた要約を生成します。AIが学習するデータは自社のSalesforceオブジェクトのみで、機密情報が外部へ出ることもありません。ナレッジ記事やチャット履歴など関連データも参照して要約するため、エージェントは情報を横断的に検索する必要がなく効率的に問題解決へ進めます。

従来のWork Summaries for Case(Beta)は2026年6月30日に提供終了予定であり、早い段階でEnhanced Summariesへ移行することが推奨されます。移行に際しては、既存のカスタムレポートやダッシュボードとの整合性を検証し、必要に応じて出力フォーマットを調整しましょう。

Real-Time Translationsによる多言語対応

Spring ’26では、Real-Time TranslationsとTranslate Service Repliesにより、サービスレップが言語の壁を越えて対応できるようになりました。Real-Time Translationsは今回のアップデートでService Emailにも対応し、管理者が機能を有効化すると、サービスレップは顧客から届いたメール本文を自分の母国語に翻訳でき、返信メールも顧客の言語へ翻訳して送信できます。英語以外の言語を扱う企業にとって大きな恩恵であり、翻訳のためにサードパーティツールを経由する必要がなくなります。

Real-Time Translationsの特徴は、チャットやメッセージ入力中にリアルタイムで翻訳プレビューが表示される点です。ただしクレジットが消費されるため、Spring ’26では翻訳プレビューを非表示にする設定が追加されました。新人はプレビュー表示、熟練者は非表示といった運用が可能です。

翻訳精度についてもAIの継続学習により改善されています。Salesforce特有の語句や業界固有の略語も文脈に合わせて訳出できます。専門用語についてはカスタム辞書を設定して正確な翻訳を担保することをおすすめします。

サービスプラン自動作成とSLA遵守

エージェントはケースフィード、メッセージング、音声通話の履歴を「グラウンディング」のソースとして活用し、解決に向けた具体的なサービスプランをドラフトします。作成されたプランや返信内容は、サービス担当者や顧客の優先言語にリアルタイムで翻訳されます。

Spring ’26以降、プラン作成はデジタルエージェント専用のServicePlanner User権限で実行されます。担当者が本来参照権限を持たないナレッジ記事もAIが裏側で統合解析し、より網羅的な解決策を提示できます。

Agentforce SLA SummaryによりAIがSLA遵守状況を分析・要約します。管理者はSLA違反の傾向や期限切れに近いレコードなどのリスク要因を即座に把握できます。インテリジェントなケースタイムラインにより、断片化されていたフィードや関連リストが単一のタイムラインコンポーネントに統合され、一目でケースの全容を把握できます。

Agentforce Marketing:戦略から実行までの高速化

マーケティング担当者はAIとの対話を通じて、戦略ドキュメントに基づいた自律的なキャンペーン展開が可能になりました。

マーケターは戦略を記したPDFやWordファイルをSalesforce Filesにアップロードしてエージェントにメンションするだけで、AIがブランドトーンを学習しキャンペーンブリーフを自動作成します。従来の「一方的なメール配信」ではなく、AIエージェントによるリアルタイム応答が可能な「双方向対話型メール/SMS」も簡単に構築可能です。Flow Builderの「Wait Until Response」要素などが活用されます。

Agentforce Adaptive Websitesにより、ユーザーのリアルタイムな行動シグナル(クリック、ページ表示など)に基づき、ウェブサイトのコンテンツ、画像、メッセージのトーンをAIが動的に最適化しエンゲージメントを最大化します。

Einstein Conversation Insights:会話データの資産化

商談やサポートでの「会話」は、Spring ’26において完全に構造化データとしてCRMに統合されます。

ECIデータはSalesforceプラットフォームの標準オブジェクトに保存され、Flow、Apex、Prompt Builderから直接参照可能になりました。特定キーワード出現時の自動通知やToDo自動生成などのCRM自動化が外部APIを介さず容易になります。

Opportunity Closing Recaps機能により、商談の成否要因(価格設定、競合、製品の不足、成約の決め手)をAIが構造化データとして抽出・分析します。組織全体の勝率向上に向けたデータドリブンな戦略改善が可能になります。

管理者・開発者のための新機能

Setup with Agentforceによる自然言語管理

Setup with Agentforce(Beta)により、管理者が自然言語で指示を出すだけで主要タスクをサポートします。対応タスクは、ユーザー管理とパスワードリセット、アクセス権のトラブルシューティング、権限セット・共有ルールの管理、カスタムオブジェクトと項目の作成、フローの作成・要約・管理、カスタムレポートタイプの作成、Lightningページの作成、数式のエラー修正と詳細解説取得、Salesforceヘルプからの情報取得、組織の使用状況とライセンス情報の取得、Security Health Checkスコアの把握です。

この機能を利用するにはData Cloudのセットアップに加え、「Setup with Agentforceの使用」「プロンプトテンプレートの実行」権限が必要です。

Agent Scriptによる厳密な制御

自律型エージェントの「ブループリント」を記述するための新しいプロコード言語Agent Script(Beta)が登場しました。自然言語の柔軟性とビジネスルールを厳密に制御するプログラム的表現を両立させます。VS Code上でAgent Scriptを編集し、シミュレーション(モック動作)またはライブモード(実際のApexやFlowを使用)でエージェントの挙動をプレビュー・検証できます。

AI活用の効果測定と改善サイクル

AI要約や翻訳機能の効果を測るには具体的な指標設定が欠かせません。SalesforceではService AI Adoption & Analyticsダッシュボードを提供しており、AI機能の利用率、平均処理時間(Average Handle Time)への影響、ケース解決率の推移などを確認できます。ダッシュボードはTableauベースで構築されており、アドホックな切り口での分析もサポートします。

運用改善にはKPIの明確化が必要です。「平均応答時間」「平均解決時間」「お客様満足度(CSAT)」に加え、AI活用時には「要約利用率」「翻訳利用率」も重視しましょう。AIが誤解を招く回答を出していないか、情報漏洩の危険はないかなど、定性的なチェックを定期的に行うことが重要です。

Spring ’26ではAI利用時の課金モデルも改善されています。Self-Service AI機能やDynamic Q&Aではユーザーセッション単位での課金が導入されました。AI生成コンテンツの品質向上には継続的なプロンプト改善が不可欠であり、Prompt Builderでデフォルトのプロンプトを編集可能になりました。

対応エディションとライセンス

Enhanced SummariesはAgentforce for ServiceもしくはAgentforce 1 Editionで利用できます。Real-Time TranslationsとTranslate Service Repliesも同様です。翻訳機能のクレジットはSalesforceライセンスに付属するEinstein Generative AI Creditsが消費されます。Creditsは組織単位で付与されるため、利用状況に応じて追加購入が必要になる場合があります。

Self-Service AIやDynamic Q&AなどのSelf-Service関連AI機能はSession単位で課金されます。Unified Customer Profileを活用するにはData CloudライセンスやCustomer Signals Intelligenceライセンスが必要です。Agentforce 1 EditionはService CloudとSales Cloudを統合した包括的なパッケージであり、大企業から中堅企業まで柔軟にフィットします。

導入のベストプラクティスと事例

運用ルールの整備

AI要約や翻訳機能を効果的に活用するには、ケースフィードやコメント欄を適切に整理し意味のあるデータを残す運用が不可欠です。チャットやメールでのやり取りを定型的な構造に沿って記録することでAIが文脈を理解しやすくなります。Quick Textを活用して定型文を挿入すると入力のばらつきを減らせます。箇条書きや定型フォーマットを使って重要な事実や顧客の要望を簡潔に記録すれば、AIが文脈を読み取る精度が高まります。

翻訳機能ではエージェントごとに優先言語を設定し、カスタム辞書で専門用語やブランド名を登録しておくことが重要です。社内用語は翻訳せずカタカナ表記で記載するガイドラインを設けると誤変換を防げます。KCS(Knowledge-Centered Service)の概念を取り入れ、チーム全体で知識を蓄積・共有する文化を構築することも重要です。

導入事例と効果

ソフトウェア企業A社ではEnhanced Summaries導入により、サービスレップの平均解決時間が20%短縮しました。要約の自動生成により瞬時に状況把握ができるようになったためです。

製造業B社ではService AI Adoption & Analyticsダッシュボードを活用してAI利用状況を監視し、効果が高いチームの運用を他チームへ展開することで全社の対応品質を均一化しました。

AI機能導入には社内教育とチャンピオン制度の活用が効果的です。特定のエージェントを「AIチャンピオン」として任命し、トレーニングやベストプラクティス共有を担当させることで現場浸透を加速できます。

メリットとデメリット

メリットとして、要約機能によりサービスレップは膨大なケース情報を瞬時に把握し平均応答時間を短縮できます。翻訳機能により多言語対応が容易になりグローバル企業でもサービス品質を維持できます。情報整理により属人的な対応が減りナレッジの蓄積・再利用が促進されます。

デメリットとして、AIの品質に依存する部分があり要約や翻訳の精度が不十分な場合は誤解を招く可能性があります。専門用語が多い業界ではカスタム辞書やプロンプト調整が必須です。生成AIクレジットの消費によりコストが増大する可能性があり、AIへの過度な依存は担当者のスキル向上機会を失う懸念もあります。

SalesforceのAI機能は組織内部データのみを利用し外部送信しない設計ですが、アクセス権限やログ監査機能を活用した情報漏えい防止対策は必要です。

まとめ:AIエージェントを「チームの一員」として迎える

Salesforce Spring ’26リリースの本質は、AIを単なる「効率化ツール」としてではなく戦略を実行する「自律的な同僚」として位置づけたことにあります。人間が戦略の舵取りと信頼(Trust)の管理を行い、AIエージェントがData Cloudのリアルタイムデータを武器に自律的に動く。この共生形態こそが企業の競争力を次の次元へと押し上げる鍵となります。

これまでのSalesforceが「最新鋭の計器を備えたコックピット」だったとすれば、Spring ’26は「経験豊富な副操縦士(AIエージェント)が隣に座り、目的地(戦略)の決定以外の複雑な操縦や計算を自律的に進めてくれる自動操縦システム」へのアップグレードです。

AI機能は効果測定と運用改善を繰り返すことで真価を発揮します。現場の課題が大きいプロセスから段階的に導入し、フィードバックを繰り返すことが成功の鍵です。

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本記事はSalesforce Release Notes(2025年12月29日最終更新)の公式情報を基に執筆しています。

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