Agentforce公式ガイド解説②:構築とテストの基本

Agentforce公式ガイド解説②:構築とテストの基本

本記事は、Salesforce公式ドキュメント『Agentforce Implementation Guide for Customers』に基づくシリーズ全6本のうち第2章です。
「Build」と「Test」フェーズは、Agentforce実装の中核をなす工程です。
公式ガイドではフロー構築、プロンプトテンプレート設計、Einstein Generative AIの有効化など、20ページ以上にわたって詳細手順が記載されています。
本記事では、その中から“最低限これを押さえれば動く”構築とテストの流れを抽出し、ノーコードでも理解できるように簡潔化しました。
Salesforce初心者でも実際にエージェントを構築できるよう、画面イメージと構成思想を中心に解説します。

構築フェーズの概要

エージェントを構築する際は、まず環境の準備から始めます。Salesforce管理者が以下の機能を有効にしているか確認しましょう。

  • Data Cloud:ナレッジやFAQを格納するデータ基盤。
  • Einstein Generative AI:生成AIによる回答生成機能。
  • Agentforce機能:エージェントを作成・管理するためのサービス。

エージェントの作成とカスタマイズ

エージェントはテンプレートをもとに作成します。まず「Service Agent」テンプレートを選び、わかりやすい名前を付けます。続いて以下のような設定を行いましょう。

  1. フィールドとトピックの確認 – デフォルトで含まれるトピック(General FAQやCreate Caseなど)を確認し、自社に不要なものを一時的に削除します。
  2. システムメッセージの編集 – エージェントが最初に表示する挨拶やエラー時のメッセージを自社のトーンに合わせて編集します。「こんにちは!何かお手伝いできることはありますか?」など親しみやすい文言にすると良いでしょう。
  3. データライブラリの登録 – FAQやマニュアルなど回答の根拠となる資料をPDFなどで用意し、「Data Library」にアップロードします。データを更新した際はライブラリを再読み込みすることが推奨されています。
  4. トピックのカスタマイズ – ユースケースに合わせてトピックの範囲や説明文を調整します。Makana社の例では「General FAQ」は医療機器に関する一般的な質問に限定し、「Case Management」では顧客のメールアドレスを取得して既存ケースを検索するフローを用意しました。
  5. 権限設定 – エージェントユーザーに必要なパーミッションを付与します。本番環境では最小限の権限に留めることが推奨されます。

上記のステップを踏むことで、ベースとなるエージェントが完成します。実際の画面操作やフローの作成は、Salesforce管理者や開発者と協力して進めると安心です。

テストフェーズの概要

生成AIは同じ質問でも異なる回答をすることがあるため、エージェントを公開する前にテストを行い、期待通りに動作するか検証することが重要です。ガイドではテストを「計画・準備」と「コアテスト&反復」の2段階に分けています。

テスト計画と準備

テストの目的を明確にし、何をもって成功とするかを決めます。例えばMakana社では「FAQへの自己解決率を40%以上にする」「ケース管理の平均処理時間を半分にする」といったSMART目標を立てました。計画段階では次のような項目を整理します。

  • テストシナリオ:顧客が実際に尋ねそうな質問を文章で表現します。
  • 評価指標:完全性(一貫性や簡潔さ含む)、指示遵守など、回答の良し悪しを測る基準を決めます。
  • データ要件:必要な顧客情報や製品情報がシステムに登録されているか確認します。

テストシナリオの作成

シナリオには「シナリオ説明」「テスト発話」「期待されるトピック」「期待されるアクション」「予想される応答」「発話バリエーション」を含めると良いでしょう。以下はMakana社の保証期間確認シナリオの例です。

  • シナリオ説明:顧客が新しく購入した製品CGM‑3000の保証期間を確認したい。
  • テスト発話例:「CGM‑3000の保証期間を教えてください」「このモニターにどんな保証が付いているの?」
  • 期待トピック:General FAQ
  • 期待アクション:Answer Questions with Knowledge
  • 予想応答:「CGM‑3000は購入日から12か月の限定保証が付いています」
  • バリエーション:丁寧な表現や怒り口調などを含め複数の発話パターンを用意し、エージェントが意図を正しく理解するか検証します。

テストでは多ターンのやり取りも重要です。例えば保証期間を答えた後に「保証に含まれないものは?」と追加質問が来るケースを試し、エージェントが正しく説明できるか確認します。

テストの評価と改良

テストを実施したら、評価指標に基づいて結果を分析します。完全性や整合性が不足している場合は、プロンプトの調整やデータの追加を行います。また、特定の質問で誤回答が多い場合は、そのトピックの説明を明確にするなどの改善が必要です。エージェントはバージョン管理されているため、調整後に再テストを行い、品質が向上したか確認します。

よくある質問とヒント

エージェント構築とテストに関して、初心者の方からよく寄せられる質問とアドバイスをまとめました。

Q1. テストシナリオはどのくらい用意すべき?
シンプルなFAQだけであれば5〜10件のシナリオで十分ですが、多様な表現をカバーするために同じ質問でも言い回しを変えて用意すると精度が高まります。

Q2. バッチテストは必須ですか?
初期段階では手動テストだけでも品質を確認できますが、シナリオが増えてきたらTesting Centerを使ったバッチテストで効率的に検証しましょう。大量のシナリオを一括で評価することで、特定の弱点を見つけやすくなります。

Q3. エンジニアでなくても構築できますか?
エージェントの基本設定やテストシナリオの作成はノーコードツールで行えるため、非エンジニアでも取り組めます。複雑なフローやカスタムアクションを作る際はSalesforce管理者や開発者と協力しましょう。

また、テストフロー全体を図解にして共有するとチームでの理解が深まります。例えば、テストシナリオ作成→手動テスト→評価→改善→再テストというサイクルを1枚の図にまとめると、開発サイクルが明確になります。

まとめと次のステップ

本記事は、公式ガイド第2〜3章「Build/Test」をもとに、Agentforceの基本的な構築手順とテスト方法を要約しました。
実際に動くエージェントを構築し、テストでその品質を確かめる経験を通じて、AIがビジネスでどう動くのかを体感できたはずです。
次は、そのエージェントを実際の顧客接点に展開する「Deploy(展開)」フェーズへ。
サイトやチャットチャネルへの接続方法を学び、運用準備を整えましょう。

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