Salesforceデジタルエクスペリエンス入門【2025年版】初心者アドミンが最短で押さえる設定・活用・事例

Salesforceデジタルエクスペリエンス入門【2025年版】初心者アドミンが最短で押さえる設定・活用・事例

みなさん、こんにちは!
Salesforceエンジニアの森川です。
今回のテーマは「デジタルエクスペリエンス」です。顧客がオンラインで情報を探し、サービスやサポートを受ける時代になり、企業は迅速に顧客接点を構築することが求められています。Salesforceの**デジタルエクスペリエンス(Experience Cloud)**は、CRMに蓄積されたデータを活用しながら、顧客向けポータルやパートナー向けサイト、従業員向けイントラサイトなどを簡単に構築できるプラットフォームです。2021年に名称が「Community Cloud」から「Experience Cloud」へと変更され、テンプレートとドラッグ&ドロップ操作を使ってコードを書かずにサイトを作れる点が強調されています。本稿では、初心者アドミニストレーターが知っておきたいExperience Cloudの概要、Service Cloudとの連携、ナレッジ管理の方法、導入事例、業務効率化の効果、そして設定や権限管理のポイントを解説します。

デジタルエクスペリエンスの概要

Experience CloudはSalesforceプラットフォーム上のデータを公開・共有するためのWebサイトを構築できるサービスで、以下の特徴があります。

  • テンプレートとサイトビルダー – 事前に用意されたテンプレートとページコンポーネントを使い、ドラッグ&ドロップでサイトを作成できます。外部Web技術を使わずに短時間で公開サイトを構築でき、プレビュー機能も用意されています。
  • CRMデータの統合 – Experience CloudはSales CloudやService CloudなどSalesforceの他製品とシームレスに連携し、顧客情報、購入履歴、サポートケースなどのデータをサイトに表示したり入力させたりできます。
  • コラボレーション機能 – ユーザー同士のフォーラム、質問回答機能、ナレッジ記事の検索と閲覧、グループ作成やトピック管理などが組み込まれており、自助努力による課題解決やコミュニティ形成を促します。
  • 拡張性とカスタマイズ – サイトビルダーだけでなく、VisualforceやApex、Lightning Web Componentsを用いて独自のロジックやデザインを追加することも可能です。
  • CMS機能 – オブジェクトデータだけでなく、ブログやニュース記事をCMSワークスペースで作成・公開できます。コンテンツタイプには、ファイルや外部リンクを登録する「Document」、画像を登録する「Image」、リッチテキストと動画を含む記事を作成できる「News」があり、マーケティングコンテンツの運用にも対応します。

Service Cloud連携とナレッジ管理

Service CloudとExperience Cloudを組み合わせることで、顧客自身が疑問を解決できるセルフサービスサイトを構築できます。CRMに登録されたケース情報や問い合わせ履歴を外部サイトから確認・更新できるほか、ナレッジ記事、FAQ、チャットボットなどを統合できます。以下は主な活用方法です。

  1. セルフサービスポータル – 顧客がログインしてFAQやマニュアルを閲覧し、解決できない場合はWebフォームからケースを登録し、進捗を確認できる仕組みを提供します。データはService Cloudと共有されるため、オペレーターが一元管理できます。
  2. ナレッジとトピック管理 – Salesforce Knowledgeのデータカテゴリは記事を階層的に分類できますが、Experience Cloud上に階層を表示するにはカテゴリをトピックに同期させる必要があります。トピックはハッシュタグのような概念で、サイトにナビゲーション用の階層を作る際に使われます。トピックは最大3階層まで自動連携でき、階層構造を保ちながらFAQを表示する仕組みを作れます。
  3. ケース管理の効率化 – TerraSkyの事例では、Sales Cloud導入後にService CloudとExperience Cloudを組み合わせて製品問い合わせ管理システムを構築し、顧客と企業が同じ基盤でコミュニケーションできるようにしたと報告されています。

デジタルエクスペリエンスの活用事例

一般企業向け情報共有

デンツーのブログでは、Experience Cloudが「外部向け情報共有サイト」として使われる例が紹介されています。企業はFAQやナレッジ記事を公開し、問い合わせ数の削減やサポートコストの削減に役立てています。また、顧客やパートナー限定のメンバーサイトとして、アポイント予約や口座開設など個人情報を扱うプロセスも安全に提供できます。これらのサイトはログイン必須で、顧客に合わせた画面表示やデータの閲覧権限が設定されています。

業種別の導入事例

最新記事によると、Experience Cloudは業界固有の課題解決にも役立っています。以下は代表的な例です。

  • 小売業 – オンラインショップの顧客向けにFAQとサポートポータルを構築し、購入履歴を基に関連性の高いFAQを自動表示したところ、問い合わせ数が約30%減少した事例が紹介されています。
  • B2Bパートナー企業 – 卸売メーカーが取引先向けポータルを作成し、常に最新の価格表や販促資料、リード情報を共有できるようにしたところ、営業の機会損失を防ぎ、売上が20%向上しました。
  • 教育機関 – 大学が学生ポータルを構築し、シラバスや教材、試験日程を一元提供。学習管理システム(LMS)とのAPI連携により教職員の事務負担が軽減されました。
  • 医療機関 – 病院が予約受付・検査結果閲覧・AIチャットボットを備えた患者ポータルを提供し、患者は予約や履歴確認をオンラインで完結できるようになりました。

日本企業の導入事例

  • 高齢者住宅マッチング – ゼンオフィス社の構築事例では、高齢者向け住宅紹介会社がService Cloudで入居者情報を管理していたものの、取引先(施設)との情報共有は紙や電話に頼り、進捗が見えにくい状況でした。Experience Cloudで施設検索から入居までのプロセスを可視化し、各施設が案件状況や失敗理由を確認できるようにした結果、マッチング成功率が上がり、契約状況の管理負荷も大幅に減ったと報告されています。
  • メーカーの問い合わせサイト – 株式会社アシストでは、Sales Cloudによる顧客管理に加え、Service CloudとExperience Cloudを連携させて製品問い合わせ用のポータルを構築し、顧客とのコミュニケーション基盤を整備しました。
  • ディストリビューター向け研修サイト – ナウトジャパンは、Experience Cloudを使って代理店向けの販売資料共有ポータルを作成し、さらに動画とクイズによるeラーニング機能を提供しました。代理店が自分の進捗を確認できるようになり、教育コストの削減につながりました。

これらの事例は、Experience Cloudが製品情報や教育コンテンツの共有、顧客サポート、商談管理など幅広い用途で活用され、業務効率化とサービス品質向上に貢献していることを示しています。

業務効率化への貢献

Experience Cloudが業務効率化に寄与する理由は以下の通りです。

  • 自己解決率の向上 – よくある質問やマニュアルを公開し、顧客が自分で問題を解決できる環境を整えることで、コールセンターへの問い合わせを減らし、サポート担当者の負担を軽減できます。では、公開サイトにより問い合わせが減少した例が紹介されています。
  • リアルタイムな情報共有 – パートナー企業が独自に資料を管理していた場合、最新情報の共有が遅れがちです。Experience Cloudで常に最新の価格表や販促資料を公開すれば、パートナーの情報管理負担が減り売上が向上することがB2B事例で示されています。
  • 業務プロセスの可視化 – ゼンオフィス社の事例のように、施設とのマッチングプロセスをExperience Cloudで可視化すれば、担当者が進捗や課題を共有し、PDCAサイクルに活かすことができます。
  • 自動化とAI活用 – Service CloudのオムニチャネルやEinstein Botsと組み合わせることで、チャットボットによる自動応答やケース割当の自動化が可能になり、顧客体験を向上しながら対応時間を短縮できます。

アドミニストレーターが知っておくべきポイント

サイトの初期設定

  1. My Domainの有効化とパッケージの準備 – Experience Cloudを利用するには、組織でカスタムドメイン(My Domain)を有効化し、必要なパッケージ(CMS Content Type Managerなど)をインストールします。My DomainはログインURLとして使用されるため、早期に設定しておきます。
  2. デジタルエクスペリエンスの有効化 – Setupの「デジタルエクスペリエンス」からExperience Cloudを有効化し、公開用ドメイン名を設定します。希望するドメインが既に使われていないか確認し、使用可能なドメインを選びます。
  3. サイトの作成 – テンプレート(例: カスタマーサービス)を選択し、サイト名とURLを指定してサイトを作成します。作成後は有効化・公開を行い、外部ユーザーがアクセスできるようにします。

ブランディングとページ作成

Experience Cloudではテーマの変更やページのカスタマイズが簡単に行えます。Blogicalの解説では、サイト設定の言語を日本語に変更し、テーマ設定から会社ロゴをアップロードし、ボタンやヘッダーの色を調整する手順が示されています。また、ページビルダーでページバリエーションを作成し、新しいレイアウトを選択してデフォルトのホームページを置き換える方法が紹介されています。こうしたカスタマイズにより、自社ブランドに合ったデザインを短時間で実装できます。

コンテンツ管理

CMSコンテンツワークスペースを利用すると、Salesforceオブジェクトに依存しない記事やブログ、ニュースを作成できます。マーケティング部門が更新するブログ記事や、製品のリリースノートなどをサイト内に掲載する際に便利です。画像や動画を含む記事を作成する場合は「News」コンテンツタイプを選び、リッチテキストエディタで内容を編集します。

アクセス権の設計

Experience Cloudにおけるアクセス権管理は、Salesforce全体のアクセス権と同様にプロファイル権限セットロール階層共有ルールなどを組み合わせて行います。サンブリッジ社の解説によると、以下のポイントを理解することが重要です。

  • プロファイルと権限セット – 各ユーザには必ず1つのプロファイルが割り当てられ、オブジェクトレベルの基本アクセス権を定義します。一方、権限セットは複数割り当てが可能で、プロファイルを基盤として権限を追加したり除外したりできます。Experience Cloudでは外部ユーザー用のプロファイル(例: Customer Community User)を作成し、必要なオブジェクトへのアクセス権やタブ表示を設定します。
  • ロール階層 – 組織の共有設定で「階層を使用したアクセス許可」を有効にすると利用でき、各ユーザには1つのロールが割り当てられます。上位ロールのユーザは下位ロールのユーザが所有するレコードへアクセスできます。パートナーコミュニティなど階層構造のある組織でレコード共有を調整する際に役立ちます。
  • 共有ルール – オブジェクトごとに共有対象者やアクセスレベルを指定するルールを作成し、レコード所有者や条件(特定の項目値など)に基づいてアクセスを拡張できます。例えば、特定のパートナーグループ全員に特定商品情報への参照権限を付与するルールを設定できます。
  • 手動共有 – 共有ボタンを配置し、担当者が必要に応じて特定のレコードを他のユーザへ共有できます。問い合わせケースを一時的に他部署に共有する場合などに利用します。

以上の設定により、Experience Cloudサイト内で公開するデータと対象ユーザの範囲を細かく制御できます。権限の設定ミスは重大な情報漏えいにつながるため、必ずテスト環境で検証し、最小権限の原則を守りながら設定しましょう。

まとめ

Experience Cloudは、SalesforceのCRMデータを活用したポータルやコミュニティサイトを短期間で構築できる強力なプラットフォームです。テンプレートとサイトビルダーにより、非エンジニアでもブランドに合わせたサイトを作成でき、Service CloudやKnowledgeとの連携でセルフサービス機能を強化できます。さまざまな業種・規模の企業が導入し、問い合わせ削減や売上向上、情報共有の効率化を実現している事例が示すように、デジタルエクスペリエンスは顧客との接点を広げ、業務を大きく変革します。

アドミニストレーターは、サイトの初期設定、ブランドカスタマイズ、CMSコンテンツの活用、そして役割・権限管理に注力し、組織の戦略に合ったサイトを設計する必要があります。Experience Cloudは進化を続けており、新機能や統合可能なAIサービスが定期的に追加されています。Trailblazer Communityやベンダーのブログ、ハンズオン教材などを活用し、最新情報を追いながら自社の顧客体験を高めていきましょう。

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