【保存版】5分でわかる Agentforce 完全ガイド|Salesforce 自律型AI エージェント 2025

【保存版】5分でわかる Agentforce 完全ガイド|Salesforce 自律型AI エージェント 2025

みなさん、こんにちは!
Salesforceエンジニアの森川です。
今回のテーマは「Agentforce」です。本記事では、登場からわずかで2.0・2dxへと進化を遂げた Agentforceの最新情報を一挙に整理しました。これ一つで全貌がつかめますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

1. Agentforceの概要と開発背景

Salesforceが2024年後半に発表したAgentforce(エージェントフォース)は、同社のAIプラットフォーム上に新たに追加された“デジタルレイバー(労働力)のためのレイヤー”です。これは従来のチャットボットや生成AI「コパイロット(Copilot)」を超え、自律的に判断・行動できるAIエージェントを企業が構築・導入するための基盤となります。

Agentforceは社内外のあらゆる業務に対応でき、例えば顧客からの問い合わせ対応や商談リードの精査、マーケティングキャンペーンの最適化など、人手を介さずに実行できます。開発背景としては、近年の生成AIブーム(GPTモデルなど)の中で、単に人間を支援する「コパイロット」的な使い方からさらに一歩進み、人間の代わりに一定のタスクを自律遂行するエージェント型AIへのニーズが高まったことがあります。

Salesforceは2023年に生成AI「Einstein GPT」や「Einstein Copilot」を発表してきましたが、2024年9月のDreamforceイベントで「Einstein Copilot」を発展・改称した形でAgentforceを発表し、本格展開に乗り出しました。CEOのマーク・ベニオフ氏も「AgentforceこそがAIのあるべき姿だ」と述べ、社内テクノロジー(データ、メタデータ、AIモデル、ワークフロー、セキュリティ、アプリケーション)をシームレスに統合した信頼できるプラットフォーム上で提供される点を強調しています。

Agentforceは2024年10月に一般提供が開始され、同年12月には機能強化版「Agentforce 2.0」が発表されました。さらに2025年前半には「Agentforce 2dx」と称するアップデートもリリースされ、対応範囲や開発者向けツールを拡充し続けています。こうした迅速な進化は、AIエージェント技術がまさに黎明期から普及期へと移行していることを物語っています。また、Salesforceはこの領域でリーダーシップを取るべく、GoogleやAWSなど他社との提携も深化させ、複数の最先端AIモデルやインフラを取り込む戦略を展開しています。

2. Agentforceの主な機能・特徴

Agentforceは、単なるQA対応のチャットAIではなく「自律型の業務アプリケーション」として設計されています。その主な機能・特徴を列挙すると以下の通りです。

高度な推論エンジン(Atlas Reasoning Engine)

Agentforceの頭脳部分が「Atlas推論エンジン」です。これは人間の思考プロセスを模倣し、ユーザからの問いや指示をまず解釈・精緻化した上で、関連データを検索・取得し、実行プランを立案・実行する仕組みです。

複雑なマルチステップのタスクでも逐次的に自己評価・ループしながら最適解を探り、必要に応じて複数のツールやデータソースを組み合わせて処理します。このエンジンにより、Agentforceは単に回答を提案するだけでなく自ら判断して行動でき、「指示待ち型」のチャットボットやコパイロットとは一線を画しています。

Salesforce AIリサーチ部門によれば、Atlasエンジンを採用したAgentforceの回答の関連性は他のソリューションの2倍、精度は33%向上したとの調査結果もあり、エージェント型AIとして高い有用性が示されています。

プロアクティブな自律動作

従来のボットは人間からのチャット入力に応答する形式が主でしたが、Agentforceは人間の介在なしに自律的に起動・実行できます。

例えば、特定のデータ変化やビジネスルールをトリガーにエージェントがバックグラウンドで動作し、必要な処理を行うことが可能です。

これにより、「問い合わせが来たら答える」という受動的対応だけでなく、問題を予測して先回りした対応(例:IoT機器データから故障予兆を検知しユーザにメンテナンス連絡)や、社内プロセスの裏方自動化(例:受注データの生成を検知して与信チェックを自動実行)など、能動的な業務代行が実現します。

既存Salesforce資産との統合(フロー、コード、テンプレートの活用)

AgentforceはSalesforceプラットフォームにビルトインされているため、これまで企業がSalesforce上で構築してきたワークフロー(Flow)や自動化処理、Apexコード、プロンプトテンプレートなどをそのままエージェントの「行動」として組み込むことができます。

例えば、既存のSalesforce Flowをエージェントが呼び出して処理を実行したり、Apexクラスをトリガーとして動かしたりできます。設定UI上から「エージェントアクション」としてこれら既存資産を登録することで、コーディングなしに高度な自動処理をエージェントに担わせられる点が大きな強みです。

他社のエージェント開発プラットフォームでは一から統合実装が必要なケースもありますが、AgentforceではSalesforceのデータモデルやセキュリティモデルと初めから統合されているため、企業は自前のAI開発負担を大幅に減らせます。

データクラウドとの連携と知識の動的活用

AgentforceはSalesforce Data Cloud(旧称:Customer 360 Audiences)とネイティブに連携しており、社内外のあらゆるデータソースをコピーせず(ゼロコピー)に統合参照できます。これにより、CRM内の構造化データ(顧客プロファイル、取引履歴など)だけでなく、ナレッジ記事やメール、PDF、Webサイト等の非構造化データもエージェントが参照可能です。

SalesforceはこのためのRAG(Retrieval Augmented Generation)機能も用意し、アップロードされたファイルや指定URLから知識を取り込み、LLMへのプロンプトと応答をその知識で動的にグラウンド(根拠付け)する仕組みを提供しています。

例えば、顧客から問い合わせがあった際、Data Cloudを介して過去のメールやサポート履歴、製品マニュアルなど関連情報をリアルタイムに引き出し、回答に反映させることができます。

さらにハイブリッド検索によりキーワードだけでなく文脈に沿った関連情報も抽出し、最適なナレッジ記事を見つけるなど高度な検索も実現しています。これらによりAgentforceは常に最新かつ文脈に即した知識を持って動作し、回答の正確性・適合性を高めています。

マルチチャネル対応とUI要素の埋め込み

Agentforceエージェントは、ウェブサイト上のチャットウィジェット、モバイルアプリ、WhatsAppなどのメッセージング、Slack、音声通話など、複数のチャネルを通じてユーザーと対話できます。これは Experience Cloud(Webポータル)やデジタルエンゲージメントの各チャネルと統合されているため、エージェント一体型の顧客サービスをどの接点でも実現できます。

さらに 2025 年のアップデートでは「Agentforce Surfaces」機能により、各チャネル・デバイスに応じたリッチコンテンツやインタラクティブ UI コンポーネントをエージェントの回答内に埋め込むことも可能になりました。

例えば、チャットでの回答に Salesforce Lightning のコンポーネント(Agentforce Cards 機能)を埋め込み、注文状況のサマリー表やボタンを表示してその場で顧客に操作してもらう――といった高度な体験も構築できます。

これにより単なるテキスト応答を超えたマルチモーダルな対話体験が提供可能です。

信頼性・セキュリティ(Einstein Trust Layer)

Salesforceはエンタープライズ向けAIとして信頼性を重視しており、Agentforceには Einstein Trust Layer と呼ばれるセキュリティ・ガバナンス層が組み込まれています。具体的には、LLM へのデータ送信時のゼロデータ保持契約(ユーザーデータをモデル提供元に残さない)、有害・トキシックなコンテンツの検知、出力の安全性チェック、動的な情報の根拠付け(グラウンディング)など、多層的なガードレールを実装しています。

Agentforce の管理者はエージェントごとに自然言語で行動ポリシー(ガードレール)を設定でき、「こういう場合は人間にエスカレーションする」「この種の質問には答えない」等のルールを教え込めます。仮にユーザーの要求がその範囲を逸脱した場合、エージェントは適切に拒否したり、人間の担当者へ引き継ぐといった挙動を取ります。

さらに 2024 年には AI 利用の倫理原則とコントロール集として Trust Patterns も公開されました。たとえば幻覚(誤情報)低減のためのトピック分類や、人間の監督を組み込む UI デザインなど、ベストプラクティスが提示されています。

加えて、監査ログ(AI Action Audit Trail)機能によりエージェントの全アクション履歴を記録・追跡でき、企業のセキュリティ/コンプライアンス担当者が AI の挙動を検証可能です。これらの仕組みにより、Agentforce は安全かつ制御可能な AI エージェントとして企業利用に耐える設計となっています。

ローコード開発と開発者向けツール群

非エンジニアでも使える Agent Builder と呼ばれる設定 UI が用意されており、ウィザード形式でエージェントの役割設定 → トピック(対応領域)の作成 → アクション(実行可能タスク)の紐付け → ガードレール設定という流れで、ドラッグ&ドロップや自然言語入力中心にエージェントを構築できます。

Agent Builder ではエージェントが立てた「プラン」(思考の過程)の可視化や対話テストも可能で、挙動を確かめながら調整できます。また 2025 年にはビルダー内に AI アシスタント機能が加わり、トピックやインストラクション(指示文)作成時に AI が自動補完・ガイダンスを提示してくれるようになりました。

一方、プロ開発者向けには専用 CLI や VS Code 拡張が提供され、エージェント定義やテストケースをコードベースで管理可能です。さらに Testing Center では大量のテストシナリオを自動生成・実行し、出力の正確性やガードレール遵守度合い(文脈適合性や事実忠実性など)を評価できます。

DX Inspector でエージェントの全メタデータと使用データを探索・変更追跡でき、Interaction Explorer では対話ログ統計や個々のセッションの推論ステップをトレース可能です。このように Agentforce は開発からデプロイ、運用監視まで一貫したツール群を備えており、企業が安心してエージェントを構築・管理できる開発者体験を提供しています。

エコシステムとマーケットプレイス

Salesforce は Agentforce を単独製品ではなくエコシステム戦略で展開しており、2025 年 3 月には「AgentExchange」と呼ばれるマーケットプレイスを開設しました。AgentExchange には既に 200 以上のパートナー企業が参画し、エージェント用のテンプレート(特定業務に特化したエージェント)やアクション(外部 API 連携機能など)のパッケージが数百種類公開されています。これらは Salesforce のセキュリティ審査と顧客レビューを経た信頼できるコンポーネントで、管理者は自社の Agentforce 環境にワンクリックでインストール可能です。

例えば Workday 連携の人事サポート用エージェントや、契約書電子署名の DocuSign アクション、ナレッジ検索高度化の Neuron7 アクション等、さまざまな業種・用途の拡張が提供されています。

さらに Agentforce 自身も、ライブラリから最適なトピックやアクションを組み合わせて新エージェントを自動レコメンド生成できるため、ユーザーが「○○の業務を自動化するエージェントが欲しい」と自然文で指示するだけで提案を受けられます。こうしたパートナー連携と機能拡張性により、Agentforce は Salesforce プラットフォーム全体で支える広範なエコシステム型 AI となっています。

以上のように、Agentforceは高度なAI(大規模言語モデル)の推論力とSalesforceプラットフォームの業務データ・自動化力を融合し、セキュアにエンタープライズ展開するための包括的な基盤と言えます。では、Salesforceの既存製品や従来のソリューションと比べて何が異なるのか、次節で掘り下げます。

3. 既存Salesforce製品との違いと統合ポイント

AgentforceはSalesforceの従来製品群(Service CloudやEinstein、Experience Cloudなど)と密接に関係しつつも、明確な進化を示しています。その主な違いと統合ポイントを整理します。

従来のチャットボットとの違い

Salesforce は以前より Service Cloud 上で Einstein Bots というチャットボット機能を提供していましたが、これは FAQ 応答など定義済みスクリプトに沿った対話が中心でした。

Agentforce はそれを大きく超え、事前定義の枠にとらわれない柔軟な対話とタスク遂行が可能です。チャットボットが「固定ルールと繰り返しタスク」に留まるのに対し、Agentforce はビジネス内容を深く理解し、自ら計画・推論し、行動し、さらにスケールする点で本質的に異なります。

例えば旧来のボットが「荷物の追跡番号を入力してください」と決められた質問しかできなかった場面でも、Agentforce なら「引越しに伴うサービスの解約手続きをしたい」といった曖昧な相談にも対応し、必要な追加質問を自律的に考えて顧客の意図を理解し、解約処理まで完了できる可能性があります。Salesforce 自身も「もはやチャットボットやコパイロット(支援 AI)だけでは不十分で、Agentforce のような自律エージェントが求められている」と強調しています。

Einsteinや従来のAI機能との関係

「Einstein」は Salesforce の AI 機能全般を指すブランドでしたが、Agentforce 登場後は Einstein が主に基盤(Trust Layer やモデル連携部分)を担う位置付けになりました。

例えば Einstein Trust Layer は Agentforce の安全性を支える仕組みですし、Salesforce がパートナー連携する大規模言語モデル(OpenAI、Anthropic、そして 2025 年からは Google Gemini も)を呼び出す裏側も Einstein の AI インフラが担っています。一方、Agentforce はそれら基盤 AI を活用したユーザー向け応用レイヤーです。

したがって、Einstein GPT/Copilot が生成したテキストを営業担当者が参照してメールを書く――という従来の支援スタイルに対し、Agentforce では生成内容をもとに AI 自ら次のアクション(メール送信やレコード更新)まで実行します。言わば Einstein が「AI アシスタント」を生み出す技術だったのに対し、Agentforce は「AI エージェント」(代理人)を生み出す技術です。なお Experience Cloud(顧客コミュニティサイト等)は Agentforce の提供チャネルの一つで、Web ポータル上でエージェントと対話できます。

まとめると、Agentforce は Salesforce Customer 360 の各アプリ(Sales, Service, Marketing など)や Data Cloud と統合し、それら横断的なデータ・機能をフル活用して動作する新層の AI 機能です。ゆえに「Service Cloud と Agentforce のどちらを使うか」という対立ではなく、Service Cloud 上のケース管理プロセスに Agentforce エージェントを組み込み自動処理させる――といった従来製品の拡張・強化として捉えるのが適切です。

SlackやFlowとのネイティブ連携

Salesforce が買収したコラボレーション基盤 Slack、およびワークフロー自動化基盤 Flow(Salesforce フロー)とは Agentforce がネイティブに繋がっています。Slack については Agentforce エージェントを Slack 上にデプロイでき、社員は普段使っているワークスペース内でエージェントと対話可能です。たとえば DM やチャンネルで @Agentforce にメンションして依頼すると、社内ナレッジを参照した回答を得たり、その場でワークフローを実行させたりできます。さらに Slack の Workflow Builder 内で Agentforce をステップとして組み込み、Slack 上のイベントをトリガーに自動化を起動することも簡単になりました。

Flow については前述のように、Agentforce が Flow を呼び出すことも、逆に Flow から Agentforce エージェントを Invocable Action として呼び出すことも可能です。これにより既存の業務オートメーションと高度な AI 推論が融合し、たとえば「商談レコードが成約ステージに進んだらエージェントを起動し、最適な次アクションを推論して担当者や顧客に通知する」といった連携が実現します。

このような既存製品との統合は Salesforce ならではの強みです。Microsoft など他社にも類似の自動化・チャットプラットフォームはありますが、CRM データ、業務ロジック、コラボ基盤、AI が単一プラットフォーム上に統合されている Salesforce は、とりわけ優位性が高いと評価されています。

他社ソリューションとの違い

Agentforce に類似するコンセプトとしては、Microsoft の各種「Copilot」(Dynamics 365 Copilot や Microsoft 365 Copilot)、ServiceNow の「Now Assist」(自律型エージェント)、さらにはオープンソース界隈の AutoGPT 系などが挙げられます。

これらとの大きな違いは、Agentforce がエンタープライズ向けに最初から設計され、セキュリティや企業内データ統合が万全なこと、そして実際に「行動までできる」範囲の広さです。Microsoft の Copilot は各アプリケーション内での生成 AI アシスタントですが、Agentforce は企業横断でデータにアクセスし自動実行まで可能なプラットフォームです。ServiceNow も自社 ITSM 領域で自律エージェントを発表していますが、Salesforce はそれを CRM 領域から営業・マーケ・コマースまで広げ、さらに外部システムにも MuleSoft 経由で繋げられる拡張性があります。

要するに Agentforce は「企業の全ての部門に AI エージェントを行き渡らせる」ことを目指した総合プラットフォームであり、この発想は“自社のあらゆる仕事をデジタル労働力(AI)が担うリミットレスなワークフォース”という Salesforce のビジョンに基づいています。その意味で、部分的な自動化ツールに留まらない野心的なプロダクトである点が他と異なると言えるでしょう。

4. エンドユーザー(現場担当者・顧客)に与える影響

Agentforceは導入企業のエンドユーザーにも大きな影響を与えます。ここでいうエンドユーザーとは、主に顧客対応の現場で働くスタッフ(例:コールセンター担当者)およびサービスを受ける顧客本人の双方を指します。それぞれにどのような変化やメリットがあるか見てみましょう。

顧客サービス担当者への影響(社員ユーザー)

コンタクトセンターやカスタマーサポートの現場では、Agentforce の導入によりオペレーターの働き方が大きく変わります。まず、エージェント AI がルーチン化した問い合わせの大部分を自動処理するため、人間の担当者はより複雑で高度な相談案件に集中できるようになります。

例えば Saks(高級小売)の CTO は「注文追跡のような定型業務を Agentforce が引き受けてくれることで、サービスチームはよりパーソナライズされた対応に注力できる」と述べています。

また、人手では不可能な同時並行処理も実現します。Salesforce の例では、あるサポート担当者が朝のグローバル会議を終えてコーヒーを淹れる間にも、Agentforce の AI チームが何百人もの顧客対応を並行で片付けていたというように、応対可能件数が飛躍的に増大します。OpenTable 社では予約変更やポイント照会などのルーチン対応を Agentforce が肩代わりした結果、10 分の電話対応が 8 分に短縮され、人間スタッフは浮いた時間で関係構築に専念できているとのことです。

さらに Agentforce は人間担当者へのエスカレーションもシームレスに行います。難易度の高い案件に切り替わる際には、それまでの AI と顧客のやり取り履歴や関連情報が即座に担当者コンソールに共有されるため、担当者は一から事情を聞き直す必要がありません。これにより顧客も担当者もストレスなくバトンタッチでき、真に協働する人間と AI の形が実現します。

顧客(消費者ユーザー)への影響

サービスを受ける顧客側にとっても、Agentforce による AI 対応は大きなメリットがあります。第一に、待ち時間の劇的短縮と 24/7 対応です。AI エージェントは常時稼働し、同時に多数の問い合わせを捌けるため、コールセンターのような待ち行列や営業時間外の対応遅れが解消されます。実際、Salesforce 自社のヘルプサイトでは Agentforce 導入後、問い合わせの 83% を人手を介さず解決し、人間対応が必要なケースを半減させたといいます。

また、回答の正確さと一貫性も向上します。Agentforce は常に最新の知識に基づき回答を生成し、しかも社内ポリシーに沿ったトーンや内容を保つため、担当者ごとのバラつきが少なく高品質な対応を誰に対しても提供できます。

さらに Data Cloud のおかげで顧客ごとの購入履歴や好みを把握しているため、パーソナライズされた応答も可能です。例えば小売業でのパーソナルショッパー AI では、EC サイト上で顧客の嗜好を学習し「あなたにはこの新作コートが合いそうです」と個別提案したり、自然な対話で商品を探してカートに入れる支援をしたりします。従来の FAQ ボットのように決まった質問にしか答えられないのではなく、自由な質問・要望に対し会話形式で対応し、必要なら商品をレコメンドして注文手続きまで進める――そんなコンシェルジュ的な体験を顧客は得られます。

金融機関でも、例えば銀行の Agentforce エージェントが口座不正利用の調査を自動で進め、顧客には適宜進捗を知らせたり仮払い処理完了を通知したりと、迅速なサービスを提供できると期待されています。

総じて、Agentforce により顧客満足度の向上と待ち時間・手間の大幅軽減が見込まれ、企業と顧客の関係性強化にもつながると考えられます。

他部門の従業員への影響

Agentforce はカスタマーサービス以外にも、営業部門や社内 IT 支援など幅広い従業員を支援します。

たとえば営業部門では、リード育成エージェントが見込み客に自動でフォローアップメールを送り製品提案を行ったり、営業会議に AI が同席して商談のやり取りを分析・コーチングしたりできます。マーケティングではキャンペーン計画を AI がアシストし、コマースでは在庫最適化や EC サイトでの接客を担うケースも想定されています。社内ヘルプデスクでは、社員からの問い合わせに答える社内向けエージェントが Slack 上で稼働し、人事や IT の定型質問に即座に回答したり申請手続きを自動化したりします。こうした「デジタル同僚」の登場により、従業員は雑多な定型業務から解放され、より創造的・戦略的な仕事にフォーカスできるようになります。

一方で、従業員には AI が出した提案を最終判断したり、AI が扱えない例外ケースを処理したりする役割へのシフトも求められます。Agentforce はあくまで人間を完全には代替しない「増強」の位置づけであるため、従業員は AI を監督・活用するスキルを今後磨いていく必要があるでしょう。

Agentforce はエンドユーザーに効率化とサービス水準向上をもたらす一方、人間と AI の協働体制への移行を促します。顧客は迅速で的確な応対を受け、従業員はより価値の高い仕事に注力できるようになり、Win‑Win の効果が期待できます。

5. 管理者や開発者に与える影響

Agentforceの導入は、Salesforce管理者やシステム開発者の役割にも変化を及ぼします。以下、管理者/開発者視点での影響や求められる対応を整理します。

AIエージェント開発・管理という新たな職務

従来、Salesforce 管理者は項目追加やワークフロー作成、ダッシュボード作成といった構成作業が中心でした。Agentforce 導入後は、「エージェントを設計・育成する」という新しい職務領域が生まれます。具体的には、エージェントの役割定義やナレッジソースの登録、アクション(業務手順)の実装、ガードレール設定などを行い、さらに運用中のエージェントの回答内容をチューニングしたり、挙動をモニタリングしたりします。

これはまさに人材育成やプロセス改善に近い業務であり、管理者は業務部門と密に連携しながら「この業務は AI に任せられるか? 任せるとしたらどのように知識とルールを与えるか?」を検討する必要があります。Salesforce はこのような役割のユーザを支援するため Trailhead 上に Agentblazer Community を新設し、業界横断で知見共有やスキル習得を促しています。

つまり、今後 Salesforce 管理者は「AI エージェント管理者」としてのスキルセット(プロンプトデザインや AI ガバナンス等)も求められるようになるでしょう。

開発生産性の向上とハイブリッドな開発体制

Agentforce はローコードで構築できますが、プロ開発者にとっても多くの新ツールが提供されることで開発生産性が向上します。前述のとおり CLI/VS Code 対応やテスト自動化ツールが用意されており、従来 DevOps Center で行っていたアプリ開発ライフサイクルにエージェント開発を組み込めます。

特に Testing Center での大規模テストケース生成や、Interaction Explorer での詳細トレース&推奨改善案提示は、AI の不確実な挙動を調整するうえで強力な武器となります。

また Agentforce Developer Edition(開発者エディション環境)の提供により、ライセンスを持っていなくても誰でも無料で Agentforce+Data Cloud 環境を試せるようになりました。この環境では 10 GB の Data Cloud 使用と LLM 呼び出し 150 回/時が含まれており、プロトタイピングや技術検証が容易です。これまで AI 開発は環境構築やモデル準備に手間がかかりましたが、Agentforce では即座にビジネスロジック構築に取りかかれる点で、開発のスピードアップとコストダウンに寄与します。

Salesforce によれば Agentforce を活用することで AI エージェント開発が従来比 16 倍速く、精度も 75% 向上したとの独立調査結果もあり、早期に ROI を実現しやすいとされています。

既存システムとの統合負荷軽減

Agentforce は Salesforce プラットフォーム上の一機能であるため、Salesforce と連携済みのシステムやデータはそのままエージェントにも活用できます。

MuleSoft の新機能 「MuleSoft for Agentforce」 では、管理者が MuleSoft 上の既存 API を Agentforce のトピックやアクションとして自動生成でき、さまざまな外部システムの機能を簡単にエージェントに組み込めます。

さらに MuleSoft API カタログと Topic Center により、社内外のあらゆる API を集約管理し、それらを即座にエージェントが呼び出せるスキルとして登録する仕組みも整いました。これにより開発者は「API さえ用意すれば、あとの対話処理や推論は Agentforce に任せられる」ようになります。ERP や基幹 DB との連携も MuleSoft 経由で容易に実現するため、AI プロジェクトにありがちだったシステム統合集約による遅延を最小限にできます。

実際、「Agentforce なら自社の AI エージェントを数日で立ち上げ可能だった。他のプラットフォームのような大掛かりなデータ統合やカスタム開発は不要だ」と BACA Systems 社のエンジニアはコメントしています。

AIガバナンスとデータ準備の重要性

一方で、Agentforce 導入にあたって管理者・IT 部門が注意すべき点もあります。エンタープライズ AI 全般の課題として、社内データのクレンジングや統合、ガバナンス体制の整備が不可欠です。Agentforce は Data Cloud や MuleSoft でデータ統合が容易とはいえ、元データが散在・不整備では成果を出しづらいでしょう。また、エージェントに誤った権限設定をすると情報漏洩リスクもあり得ます。

CIO らはエージェント AI 採用前にデータガバナンスやセキュリティ、社内ポリシー整備に注力すべきと指摘しており、管理者はこれまで以上に横断的なデータ管理・権限管理への意識を高める必要があります。幸い、Agentforce は既存の Salesforce 権限モデルを継承するため、AI だからといって特別な新リスクが増えるわけではありません。

しかし、プロンプトや回答の監査、誤った学習をさせないデータ選別など、AI 特有のガバナンス実務は新たに発生します。この領域はまだベストプラクティスが確立中ですが、Salesforce も Trust Layer 強化や「Agents for Impact」(NPO 向け支援プログラム)といった取り組みで、安全で有益な AI 活用をコミュニティ全体で模索しています。

管理者は最新情報をキャッチアップしつつ、自社のセキュリティ・コンプライアンス部門とも協調して AI 統制を行っていくことが求められるでしょう。

ライセンスとコストへのインパクト

Agentforce は追加料金のアドオン製品(会話回数ベースの課金)として提供されています。一般提供された Agentforce Service Agent(標準エージェント)の価格は 1 会話あたり 2 ドルから開始し、ボリュームディスカウントもあると発表されています。

Salesforce はまず試してもらうため Salesforce Foundations という Enterprise Edition 以上向け無償アドオンに、Agentforce 利用枠(初回 1,000 件の会話分)を付属するキャンペーンも行っています。そのため、最初はコストを気にせず試せますが、本格運用時にはどの程度自動対応できるかで ROI が決まってきます。

Agentforce 導入が進む企業では、AI エージェントの効果で人件費削減や売上増などが期待されており、Valoir 社の分析では「エージェント導入により ROI が累積的ではなく指数的に向上し得る」との評価もあります。また、Agentforce が Salesforce 他製品の利用拡大を促す「ハロー効果」も指摘されています。実際、Agentforce で自動化するには Sales, Service, Data Cloud といったコア製品のデータや機能整備が前提となるため、結果として Salesforce プラットフォーム全体の価値向上につながる側面があります。

したがって、管理者は単体のライセンスコストだけでなく、全社的な DX 効果・コストメリットを踏まえて Agentforce 導入を社内提案・評価することになるでしょう。

6. 市場での反応や導入事例

Agentforceはリリース以来、顧客企業やアナリストから大きな注目を集めています。市場での主な反応や導入事例を見てみます。

顧客企業の導入状況

2024 年 10 月の一般提供開始以降、Agentforce は急速に市場浸透しつつあります。Salesforce の 2025 会計年度 Q4(2025 年 1 月終了)の決算報告によると、わずか数ヶ月で 5,000 社以上の顧客が Agentforce 利用契約を結び、そのうち 3,000 社が有償導入に至ったとのことです。マーク・ベニオフ CEO はこの四半期を「Agentforce の四半期」と呼び、Agentforce が同社ビジネスのハイライトになったことを強調しました。

同四半期には Agentforce 関連で 100 万ドル超の大型契約が 25 件も締結され、そのうち 3 件は 1 社で 1,000 万ドル超に上ったとの報告もあり、複数の大企業が大規模投資を始めていることがわかります。

2025 年に入り、Trailblazer DX イベントなどでも Agentforce 関連の発表が相次いでおり、文字通り Salesforce の AI 戦略の中心になっています。

業種別の導入事例

Agentforce は業種を問わず活用が期待されています。

実際に導入を公表している例として、飲食予約プラットフォームの OpenTable は予約変更やロイヤリティポイント対応を AI に任せ、オペレーターの負荷軽減とサービス向上を実現しています。高級百貨店の Saks も配送状況確認などの定型問い合わせに Agentforce を活用し始めています。

人材サービス大手の Adecco Group は、候補者の事前スクリーニングや履歴書強化を Agentforce で自動化し、マッチングと採用スピード向上を目指しています。また、Workday と連携した社内ヘルプエージェント構築事例や、金融の Indeed 社がデータクラウド+Agentforce で採用プロセスを 50% 短縮する目標を掲げる例もあります。

さらに、航空(フィンエアー)、空港(ヒースロー)、家電(SharkNinja)、ソフトウェア(IBM)など多彩な業界の大手がパイロット導入を進めています。これらは一部に過ぎず、Salesforce は金融、教育、保険、製造、公共など幅広い業界シナリオでの活用を例示。特に日本を含むアジア太平洋地域では 2025 年前半のワールドツアーイベントで Agentforce が紹介され、グローバルでの事例創出が加速しています。

顧客の声と成果

Agentforce 導入企業からは概ねポジティブな声が上がっています。

例えば OpenTable では「Agentforce によって 10 分の通話時間を 2 分短縮できれば、その分顧客との関係構築に充てられる。Service Cloud との統合で顧客の好みや履歴も把握した上で対応でき、問題解決だけでなく質の高い対話が可能になる」とのコメントがあります。

人材大手 Adecco は「Data Cloud や MuleSoft と Agentforce を組み合わせてデータの力を引き出し、意思決定を加速・効率化しサービス提供を再構築している」と評価しています。

BACA Systems は「Agentforce により AI エクスペリエンスを数日で立ち上げられた。データプライバシーも Salesforce の信頼性に基づき確保されている」と報告し、まずは社員向けユースケースから週数時間の効率化を実現したと述べています。

教育機関の Unity Environmental University も、従来フォームや有人対応だった入学手続きを Agentforce エージェントで改革し、学生がサイト上で 24 時間サポートを受けられるようになると期待しています。

こうした具体的な成果・期待の共通キーワードは「人間のチームを拡張する」「Routine を減らし High-touch な対応へ」。現場では AI が敵ではなく“頼れる同僚”として受け入れられ始めています。

市場全体の評価

アナリストや第三者の評価も上々です。

調査会社 Valoir の CEO は「Agentforce により企業は AI による顧客対応自動化で線形的な改善から指数的な ROI へ移行できる。データ・フロー・UI を統合することでリスクを抑えつつ迅速に価値を生む」と述べています。

Arion Research の CEO も「Agentforce の自律エージェントは 24 時間迅速・正確・個別対応で顧客体験を変革する。高度な意思決定と行動で問題解決を大規模化し、人間の従業員はより複雑なタスクに注力できる。複数チャネルで一貫したシームレス対応を新たな標準にした」と高く評価しています。

一方、AI ガバナンスやデータ整備への課題は依然残るため、現時点では積極導入派と慎重派に分かれるとの声もあります。競合他社も次々と類似ソリューションを打ち出しており、市場は「エージェント型 AI 元年」とも言える盛り上がりを見せています。

Salesforce は Agentforce で先行したものの、Microsoft も 2024 年後半に Copilot を営業・カスタマーサービス分野へ拡張し、Google も Duet AI や Dialogflow の進化版を強化中です。今後は実用性・信頼性の競争が激化する中、Salesforce は豊富な企業データ資産と信頼モデルを武器にシェア拡大を狙っています。

7. 今後の展望とロードマップ

最後に、Agentforceの今後の展望について整理します。Salesforce公式発表や提携動向から、今後予想される方向性は次の通りです。

マルチモーダルAIへの対応

2025 年 2 月、Salesforce は Google とのパートナーシップ拡大を発表し、最新の大規模モデル「Google Gemini」を Agentforce で利用可能にする計画を明らかにしました。Gemini はテキストだけでなく画像・音声・動画などのマルチモーダル入力を処理でき、しかも 200 万トークンもの長大なコンテキストを扱える次世代モデルです。

Agentforce が Gemini に対応すれば、画像や音声を理解してより複雑なタスクを遂行できるようになります。例えば保険請求のシナリオでは、顧客がアップロードした事故車両の写真や音声メッセージをエージェントが解析し、損傷評価やクレーム処理を自動で進め、必要に応じて音声で顧客に連絡を取る――といったことも可能です。

Gemini の正式リリース後、2025 年中には Agentforce 内でのプロンプト生成や推論に組み込まれる予定とされており、これが実現すれば Agentforce は視覚・聴覚も持つ AI エージェントへと進化します。

このマルチモーダル対応により、従来のテキスト限界を超えた高度な業務自動化シナリオが見込まれ、Agentforce の適用範囲はさらに大きく拡張されるでしょう。

他クラウドプラットフォームとの統合

Salesforce はマルチクラウド展開にも舵を切っています。前述の Google 提携では、Agentforce や Data Cloud、Customer 360 各種アプリを Google Cloud インフラ上で動作させる計画が含まれています。これにより、特定地域のデータレジデンシ要件や大規模顧客のマルチクラウド戦略に対応しやすくなります。また Google Cloud Marketplace 経由で Salesforce 製品を購入できるようになり、共同顧客にとって調達が簡易化するメリットもあります。

AWS とも提携を強化しており、Agentforce を含む全 Salesforce クラウドを AWS Marketplace で提供開始したほか、Zero Copy によるデータ連携(例:Redshift と Data Cloud の連携)や、Salesforce の BYO LLM 機能と AWS Bedrock サービスの統合なども進んでいます。これらにより、Agentforce エージェントはより広範なデータに安全にアクセスでき、企業は既存のインフラ投資を生かしつつ導入を進められる環境が整いつつあります。

要するに、Salesforce は自社プラットフォームの境界を広げ、主要クラウド事業者と連携して “どこでも Agentforce” を実現しようとしています。この流れは 2025 年以降も続くと見られ、企業は自社に最適なクラウド環境で Agentforce を走らせる選択肢を持てるようになるでしょう。

コンタクトセンターAIの高度化

Google との協業の一環で、Salesforce Service Cloud と Google Cloud のコンタクトセンター製品(Dialogflow や Contact Center AI)との深い統合も予告されています。2025 年中には、Service Cloud 上の Agentforce 仮想エージェントがリアルタイム音声翻訳や感情分析を活用できるようになり、さらに Google の仮想エージェント(Dialogflow エージェント)とも連携してエージェント to エージェントのインテリジェントなハンドオフが可能になるとされています。

例えば電話応対では、まず Google の音声エージェントが会話しつつ裏で Agentforce がマルチステップの処理を行い、適切なタイミングで会話主導権を受け渡す――といった協調が実現するかもしれません。また Slack と Google Workspace 間の連携強化も検討中で、Slack から Google Drive 上のドキュメント検索・操作をしたり、Gmail と Slack の情報共有が容易になる機能などが想定されています。

これらは Agentforce 自体の機能ではないものの、エージェントが活躍する基盤となるデジタルワークスペースを統合する動きと言えます。将来的にはユーザーが使用ツールの違いを意識せず、背後で各種 AI エージェントが連携してサービスを提供してくれるようになるでしょう。

複数エージェントの協調(マルチエージェント体制)

現在 Agentforce は単一のエージェントが特定の役割を持って動きますが、将来的には複数の AI エージェントが連携・分担して業務を処理するシナリオも考えられます。Salesforce は研究開発の中で “エージェント同士が対話し問題解決するシミュレーション(Agentic Simulation)” にも触れており、これは企業内に部署ごとのエージェントや専門分野別エージェントが存在し、それぞれが協調して人間をサポートする世界観です。

2025 年はエージェント AI が単一タスクからマルチエージェント協調へと進化する元年とも言われ、Salesforce も将来的に Agentforce 上でエージェント間通信やチーム機能を提供する可能性があります。例えば、カスタマーサービス用と営業支援用のエージェントが自動連携し、問い合わせ対応の後に営業提案へとシームレスに繋げる――といった連動シナリオが想定されます。

もっとも、複数 AI の暴走防止や責任所在の明確化といった課題もあります。そのためまずは“一社内で複数エージェントを統制するための指針作り”が必要です。Salesforce はパートナー企業や研究者と協力し、エンタープライズ AI エージェントのベストプラクティス確立に取り組んでいます。

用途特化型エージェントの拡充

2024年末時点で一般提供されている標準エージェントはカスタマーサービス向け(Agentforce Service Agent)ですが、今後は営業向けやマーケティング向けのテンプレートエージェントが順次投入される可能性があります。

実際、Agentforce 2.0 ではインサイドセールス向けのリード育成や営業コーチング用スキルセット、マーケ・コマース・フィールドサービス向けスキルが追加されました。これは将来的に「Sales Agentforce」や「Marketing Agentforce」といった製品パッケージ化の布石と考えられます。

さらに、金融・製造・医療など業界別の対話テーマやアクションを持つ業界特化型エージェントも登場予定です。たとえば医療では患者問合せと予約調整を担うエージェント、製造ではIoTデータ監視と予防保全を行うエージェントなどが想定されています。これらがプロダクト化されれば、企業は自社用途に合ったAI労働力をすぐに“雇用”できるようになります。

人材・組織への影響

技術的展望だけでなく、Agentforce が普及した社会に向けて人材育成や雇用の在り方も変わるでしょう。Salesforce は 2025 年に向けて世界で 2,000 人規模の AI 関連セールス人員を増強予定とされ、それだけ市場の需要が高いことを示唆しています。

企業側でも、AI エージェントを扱える人材の確保・育成が課題となります。Trailhead(学習サイト)でのカリキュラム強化や、前述の Agentblazer Community での交流促進はその一助です。

逆にルーチン業務が大幅に削減されれば、従業員の役割再定義やスキル転換も不可避です。これは中長期的には企業文化や働き方にも影響を及ぼすでしょう。

しかし Salesforce は一貫して「人間と AI が協調してこそ最高の顧客成功が生まれる」と強調しており、Agentforce の名称にも“force”=人(労働力)の力を拡張する意味が込められています。今後もその哲学のもと、企業と顧客と従業員の三者に価値ある AI ソリューションを追求していくと考えられます。

8. まとめ

いかがでしたでしょうか。

SalesforceのAgentforceについて、概要から機能、他製品との違い、利用者への影響、市場動向、そして今後の展望まで詳細に解説しました。

Agentforceはまだ登場から日が浅いものの、企業のデジタルトランスフォーメーションを次の段階へ引き上げる革新的基盤として期待されています。その成功は、技術力だけでなく、いかに企業文化やユーザとの信頼構築を両立できるかにかかっています。

Salesforceは「AI時代のNo.1 CRM」として、信頼・拡張性・統合性に優れたAgentforceを武器に、顧客企業と共に“無限の労働力”という新しい未来図を描こうとしています。

9. お問い合わせ

現在Salesforceを効果的に活用できていない企業様や、これからSalesforceの導入を検討している企業様で、設定や運用、保守に関するサポートが必要な場合は、ぜひお気軽にご相談くださいませ!

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