みなさん、こんにちは!
Salesforceエンジニアの森川です。
今回のテーマはSalesforceの新機能「Einstein for Flow」です。これは、自然言語の指示(プロンプト)から営業やサービスの業務プロセスを自動化するフロー(Flow)をAIが自動生成してくれる画期的なツールです。本記事では、このEinstein for Flowの概要とメリットを解説し、実践的な視点を交えて解説します。
Einstein for Flow とは?
1. Einstein for Flow の定義
Einstein for Flowは、Salesforce Flow(フロー)を生成AIで自動的に作成する最新機能です。2025年春にベータ版を経て一般提供が開始されたこの機能は、管理者が作成したいフローの要件を文章で入力するだけで、数秒~1分程度でドラフトのフローが生成されます。背後では大規模言語モデル(LLM)を活用しており、フローの構造(レコードトリガーやスクリーンフロー等)や要素(レコード取得・更新、分岐、ループなど)を自動で組み立ててくれるのが特徴です。この機能により、手作業で一からフローを構築する手間が大幅に削減され、「フロー開発の時短革命」と言えるインパクトをもたらしています.
2. Einstein for Flow のメリット
フロー構築の時間を劇的に短縮
Einstein for Flowを使えば、従来フローをゼロから作成する際に必要だったオブジェクト選定、条件設計、要素配置といった煩雑な作業をAIが肩代わりしてくれます。特に繰り返し作成される業務フローや定型的なプロセスで効果を発揮し、管理者の作業時間を大幅に削減します。白紙状態からの構築に比べ、AIがたたき台を用意することで、経験者にとってもプロトタイピングが迅速になります。
初心者から上級者まで学べる“設計補助ツール”に
生成されたフローはただの自動化ではなく、「この処理を実現するにはどの要素が必要か?」を自然に学べる教材にもなります。プロンプトに対するAIのアウトプットを読むことで、初心者はフロー設計の構成やベストプラクティスを理解しやすくなります。また、上級者にとっても、見落としや別視点の設計案を得る「発想支援ツール」として活用可能です。
説明文・数式もAIにお任せ。文書化まで一括支援
Einstein for Flowはフローの実行ロジックだけでなく、説明文(Description)や数式リソースの提案までAIが支援します。ワンクリックで概要説明を自動生成できるため、チーム内の情報共有や引き継ぎもスムーズ。数式作成の自動支援により、より複雑なロジックを実装する際も負担が軽減され、構築からドキュメント整備までトータルで効率化を図ることができます。
3. Einstein for Flow を実際に使ってみよう
1. Einstein for Flowの設定
まずは、Einstein for Flowを利用できるようにするための設定を行います。
設定画面にアクセス
Salesforce画面右上の歯車アイコン(設定)をクリックし、「設定」メニューを開きます。

Einstein機能の状態を確認
クイック検索で「Einstein」と入力し、表示された項目の中から「Flow Creation with Einstein(Einstein によるフロー作成)」をクリックします。この画面では、Einsteinによるフロー作成機能が有効かどうかを確認できます。初期状態では「無効」になっていることが多いため、使用できるように設定を変更します。

Einsteinの有効化
同画面内の「Einstein 設定」ボタンをクリックし、「Einsteinを有効化」のスイッチをオンにします。これにより、先ほどの「Flow Creation with Einstein」画面に戻ると、ステータスが「有効」に変わっているのが確認できます。


フロー作成画面へ移動
クイック検索で「フロー」と入力し、「フロー」画面を開きます。画面右上の「新規フロー」をクリックして、新しいフローの作成を開始します。

Einsteinによるフロー作成を選択
フロー種別の選択画面にて、「Let Einstein Help You Build(Einsteinに構築を手伝ってもらう)」を選択します。

プロンプト入力画面の説明を確認
画面が遷移すると、Einsteinに対してどのようにフローを指示すればよいかの説明が表示されます。以下の内容を含めると、より正確なフローが生成されます。
- フローの開始条件や、画面フローの有無
- 使用するオブジェクトや項目名
- 実行したいアクション(レコード作成、メール送信など)
- 特定レコードを識別するための条件式

サンプルを選んで自動生成を体験
例として「Update Related Records When a Record Changes(レコードが変更されたときに関連レコードを更新)」を選択すると、右側のプロンプト枠に自然言語による指示文が自動で生成されます。

フロードラフトの生成
「Create Draft Flow」ボタンをクリックすると、Einsteinが指示内容に基づいて自動でフローを構築してくれます。


2. Einsteinで生成されたフローの動作確認
ここでは、生成されたフローが正しく動作するかを確認する手順を解説します。
生成フローの確認
表示されたドラフトフローを確認します。今回は「レコードトリガーフロー」が生成されているので、以下の点をチェックしましょう。
- 対象オブジェクトとトリガーのタイミングが正しいか
- 実行されるアクション(関連レコードの更新など)が意図通りか
- 条件設定(どのレコードに対して、どういう値を設定するか)に誤りがないか


問題がなければ保存
内容に問題がなければ、フローを保存します。

フローのデバッグ実行
対象となるレコードを選択し、フローの「デバッグ」機能を使って動作をテストします。

デバッグ実行後は、実行結果の詳細が表示されるので、問題がある場合は修正します。

フローの有効化
問題がなければ、フローを「有効化」します。これで実際の画面上でフローが動作するようになります。

画面上で動作を検証
取引先レコードを1件用意します。

この取引先に紐づく取引先責任者(Contact)レコードの「電話」項目を確認します。

次に、取引先レコードの「電話」項目を任意の値に更新します。

フローが正しく動作していれば、関連する取引先責任者の「電話」項目にも同じ値が自動で反映されるはずです。

4. Einstein for Flow活用のコツと注意点
Einstein for Flowを最大限活用するために、押さえておきたいポイントや留意事項をまとめます。
プロンプトは具体的に書く
繰り返しになりますが、プロンプト(AIへの指示文)は詳細に書くほど望ましい結果が得られます。「どのオブジェクトの」「どのレコードや条件で」「何をするフローか」を明示しましょう。曖昧な表現は避け、可能であれば項目名や条件値まで指定します。「○○を作成」だけでなく「○○を作成し△△に通知」といったように、トリガー条件+処理内容+対象をセットで書くのがコツです。
一度に詰め込みすぎない
現在のEinstein for Flowは、非常に長いプロンプトや複雑すぎる要件には対応しきれないことがあります。作成されるフローは最大で数個~十数個の要素に留まるため、高度なビジネスロジックは段階的に実装する方が安全です。まずは骨組みとなるシンプルなフローをAIに生成させ、その後必要に応じて手作業で要素を追加する、というハイブリッドアプローチがおすすめです。
生成後のレビューは必須
Einsteinによって生成されたフローは、必ず人の目で確認し、精査する必要があります。条件設定に誤りがないか、抜け漏れがないか、ビジネスルールに適合しているかを丁寧にチェックしましょう。AIの出力をそのまま鵜呑みにせず、最終的な品質担保は管理者の責任で行うという意識が重要です。
利用状況をモニタリング
Einstein for Flowは生成AI機能の一種であり、その実行には裏でAIクレジットやリクエスト消費が発生します。頻繁に使う場合はSalesforceの「デジタルウォレット」機能で消費状況を確認し、無駄遣いになっていないか把握しておくと安心です。また組織全体で使う場合、どのユーザにEinstein利用を許可するか権限設定も検討してください(基本は「フローの管理」権限があれば使用可能)。
機能の進化に注目
Einstein for Flowはリリース直後の新機能であり、今後さらに性能向上や対応範囲拡大が期待されます。実際、ベータ版に比べSpring ’25の正式版では生成速度や精度が向上したとの報告もあります。Salesforceのリリースノートや公式ブログでアップデート情報をチェックし、常に最新の活用方法を追いかけましょう。
5. まとめ
いかがでしたでしょうか。
Einstein for Flowは、Salesforceの自動化設計に革新をもたらす新機能です。自然言語で要件を伝えるだけでAIがフローの下書きを自動生成してくれるため、従来のように一から設計する負担が大きく軽減されます。初心者にとっては、直感的に操作できる学習ツールとして、上級者にとっては作業効率を高める設計パートナーとして機能します。
さらに、設定や動作確認の手順も非常にシンプルで、初めての方でも短時間でフロー構築を体験できるのが大きな魅力です。まずはサンプルから始めて、自動生成されるフローの構造を確認してみるだけでも、Einstein for Flowの実力を実感できるはずです。
ただし、生成されるフローはあくまで“ドラフト”であり、最終的な完成度は管理者自身が確認・調整を行う必要があります。AIの力を活用しつつ、人間の判断で品質を担保する姿勢がこれからの管理者に求められるでしょう。
まずはぜひ、Einstein for Flowを実際に触ってみてください。フロー設計の常識が変わる体験が、そこにあります。
6. お問い合わせ
現在Salesforceを効果的に活用できていない企業様や、これからSalesforceの導入を検討している企業様で、設定や運用、保守に関するサポートが必要な場合は、ぜひお気軽にご相談くださいませ!
